| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-305 (Poster presentation)

ヒメボタルの発光数における時間変動と相関

小西哲郎,中部大学工学部共通教育科

ヒメボタル(Luciola parvula)は日本の陸地に住むホタル科の昆虫である。その成虫はメス=オス間で発光による交信をする事が知られている。メスは後羽根が退化して飛ぶことが出来ず、地表や草の上などで発光する。オスは飛びながら発光しメスを探す。

ヒメボタルを観察していると、同時に光っているヒメボタルの数が、数分から数十分程度の時間で増減しているように感じられることがある。しかしそれを確かめたデータは著者の知る限り無かった。もしもこの変動が存在し、それがランダムでは無いならば、個々のヒメボタルは自分が発光するかしないかを他の個体の発光を見て決めている可能性がある。発光しているヒメボタルは大半がオスであるので、相関の存在は未知のオス=オス間通信の存在を示唆するものである。これは光を用いた通信であり、通信相手はその場に同時に存在するが空間的には離れている同性の個体であるという点で興味深い。

そこで、発光数変動の特性を解析するために、まず、ヒメボタルの発光数を定量的に測定すること、そして、発光個体数の時間的変動を確かにデータとして捉えることを目標とした。

測定は、愛知県内のヒメボタル生息地にて行った。点滅しながら飛翔するヒメボタルをデジタルカメラにより撮影した。その際、一定時間露出(3秒程度)の静止画を数時間にわたって連続撮影し、それぞれのコマに写っている光点を画像処理ソフトにより自動的に計数した。ヒメボタルはほぼ一定の時間間隔で点滅発光するので、光点の数と発光個体数(発光数)は比例すると考えてよく、光点数から発光個体数を推計することが出来る。

その結果、発光数の時系列に、数分から数十分スケールの増減が捉えられ、初期の目標を達することが出来た。当日の発表では相関についても議論したい。


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