| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-316 (Poster presentation)

東南アジア熱帯雨林に生育する野生動物の人工塩場への応答

*太田彩菜(首都大・都市環境),安田雅俊(森林総研・九州),保坂哲朗(首都大・都市環境),Mazlan Hashim(マレーシア工科大・INSTeG),沼田真也(首都大・都市環境)

東南アジア熱帯雨林には多くの野生動物が生息しているが、夜行性、小型、樹上性の種がほとんどであり、観光客が滞在中に野生動物を見る機会は極めて限られている。一方、一部の熱帯雨林では塩場(塩類が豊富な湧水や土壌)に集まる野生動物を観光客が観察できる施設を提供している。

そこで本研究では、熱帯雨林の塩類環境を把握し、野生動物の塩場への応答を理解するため、(1)熱帯雨林の地上でどのような野生動物が観察されるのかを評価し、(2)森林内の塩類環境を調べ、(3)野生動物が人工的な塩場に対してどのように応答するかを検討した。

本研究は、半島マレーシアに位置するエンダウ・ロンピン国立公園(以下ERNP)Petaエリアで行った。2015年5~11月にビデオカメラトラップを9台設置し、撮影された哺乳類の時間、頻度等を評価した。続いて、ERNP内の塩類環境を把握するため、天然の塩場が存在するタマン・ネガラ国立公園(以下TNNP)を比較対象とし、環境水及び土壌の電気伝導率(以下EC)を計測した。最後に、ERNP内に人工的に塩場を作成し、ビデオカメラトラップにより動物の応答を評価した。

その結果、ビデオカメラトラップでは7種の絶滅危惧種を含む23種の小~大型野生動物が撮影され、それらの多くは、観光客が多く訪れる時期に高頻度で撮影されることが明らかになった。続いてECを比較した結果、全種類のECはERNPの方が低く、ERNPの塩類環境はTNNPと比べて貧弱であることが示唆された。一方、人工塩場に応答したのは小型種のみであり、回数も2度だけであった。そのため、中~大型種の応答については、塩場が認識されるまで時間がかかるものと考えられた。


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