| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-334 (Poster presentation)

改訂版レッドリストと伝統行事の記録が示す長野県の生物多様性の危機の要因

須賀丈*, 堀田昌伸, 北野聡, 大塚孝一, 浦山佳恵, 石田祐子, 畑中健一郎(長野県環境保全研), 尾関雅章(長野県環境部)

種の絶滅や減少の防止には、原因となる人間活動の特定が必要である。そこで長野県版レッドリストの約10年ぶりの改訂にあたり、種の絶滅危惧要因を集計し、原因となる人間活動を評価した。絶滅危惧要因の評価は、県版レッドリストの絶滅危惧I類・IA類・IB類・II類、準絶滅危惧の各種について、各分野の専門家が共通の選択肢から3つまで選択することにより行われた。絶滅危惧要因の選択肢は「生物多様性の4つの危機」により分類した。その結果、第1の危機はほとんどの分類群で最も重要な要因であり、第2の危機はよく調査されている分類群(維管束植物・チョウ目)で、第3の危機は陸水(魚類・トンボ目)で顕在化しており、第4の危機は産地局限種の多さから今後顕在化のおそれがあること等が示された。維管束植物では第2の危機の割合が前回の18%から34%に増大していた。

第2の危機の増大は生活と身近な自然との接点の減少を意味する。このことが地域文化に及ぼしている影響とその要因を明らかにするため、野生生物を用いた県内の伝統行事の文献調査と聴きとりを行った。市町村誌類から昭和30年頃までの伝統行事を調べたところ、盆行事は野生生物利用の地域的多様性が顕著で、キキョウ等の盆花の山野からの採取が広く行われていた。そこで盆行事から区分された県下7地域で、昭和30年代の盆棚の復元、およびそれ以降の盆行事の変化とその要因に関する聴きとりを行った。その結果、昭和30年代には身近な野生生物を利用した個性豊かな盆棚が作られていたが、以降盆棚の多様性は減少していた。要因としては、生活様式の変化等の社会的要因のほか、盆花の生育地の消失等の自然的要因があった。この自然的要因には、圃場整備や薪炭林の利用放棄等の社会的要因が関わっていた。


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