| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-335 (Poster presentation)
パーム油の世界的需要の高騰に伴うプランテーションの拡大によって、豊かな生物多様性を育む東南アジアの熱帯林は急速に減少している。本研究では、マレーシアのオイルパームプランテーションを対象に、媒介昆虫として導入されるアフリカ産のゾウムシ(外来種)と、断片化した熱帯林のネットワーク形成に寄与するプランテーション内の残存林に生息する昆虫種(自生種)について、パーム種子生産への貢献度を比較することで、「残存生態系により提供される送粉サービス」を活用した持続的オイルパームプランテーション経営の実践、すなわち熱帯生態系保全とパーム油生産の同時達成ための科学的裏づけを行うことを目的とした。
ペナン州に設置した2ヶ所の調査地(一般的なプランテーションと河川に沿って小規模な森林が残存するプランテーション)において、訪花昆虫の採集を行い、その訪花パターンを解析した結果、(1)パーム種子の生産に主に貢献しているのは外来種であるアフリカ産のゾウムシであること、(2)熱帯林が残存するプランテーションでは、コバエ類もパーム種子の生産に貢献していること、(3)アフリカ産ゾウムシはパーム種子に産卵するため、パーム種子の採取に伴って個体数の減少や近交弱勢力による局所絶滅が生じ、種子生産量の低下が生じることなどが明らかとなった。
以上の結果は、残存生態系により提供される送粉サービス」の活用が、断片化した熱帯林のネットワーク形成のみならず、安定的なオイルパーム種子の生産にも寄与することを示唆するものであった。