| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-336 (Poster presentation)

四国山地におけるコマドリの生息密度にニホンジカの増加が及ぼす影響

*佐藤重穂(森林総研四国)

コマドリLuscinia akahigeは東アジア特産種であり、北海道から九州に夏鳥として渡来し、本州以南ではおもに亜高山帯の森林で繁殖する。四国山地では近年、ニホンジカcervus nipponの生息密度が増加して、その採食圧により森林の下層植生の衰退が進み、低山帯では低木層を利用する在来種ウグイスと外来種ソウシチョウの密度の低下が進んでいる。一方、亜高山帯ではニホンジカによる植生の改変が他の動物の生息に影響する例は明らかになっていない。そこで亜高山帯で低木層をおもに利用しているコマドリについて、ニホンジカの密度の増加する前後の間で生息状況を比較した。

コマドリは四国山地東部の剣山系、北部の赤石山系および中西部の石鎚山系に分布していた。このうち、ニホンジカの顕著な密度増加が2000年代前半に起こった剣山系においては、2010年代にはコマドリの密度は大きく低下していた。一方、かつてはニホンジカが生息せず、2010年代に入ってニホンジカが侵入した赤石山系と石鎚山系では、2015年には下層植生の衰退が見られず、コマドリの密度は低下していなかった。これらの山系において今後、ニホンジカの影響による植生改変が進めば、コマドリが減少する可能性が高いものと推測された。


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