| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-348 (Poster presentation)
冬期にまとまった積雪のある北海道おいて、道路への融雪剤の散布は交通の安全性の確保から不可欠である。しかし反面では、融雪剤の散布による動植物への影響が懸念されている。冬期に散布された融雪剤が付近の水域に流出すると考えられる雪解けの時期は、キタサンショウウオが産卵を行う時期である。卵嚢が産卵される水域の水質は卵にとって生理的に適応可能な範囲に保たれている必要がある。もしも融雪剤の流出によって水域の塩分濃度に変化が生じた場合、卵の発生に影響を与えると推察される。そこで本研究では、融雪剤が釧路湿原域に生息するキタサンショウウオに対し、どのような影響を与えているのかを考えるために、融雪剤として用いられる塩化カルシウム(CaCl2)に対するキタサンショウウオの卵の耐性実験を実施した。卵の塩分耐性実験の結果、CaCl2を加えていない0‰の条件下の生存率は100%であり、0.1‰以上の条件下では、どの条件下においても生存率が有意に下がった(Fisherの正確確立検定, p<0.01)。このことから、0.1‰という非常に低濃度であったとしても卵の生存に影響与える可能性が考えられた。CaCl2が含まれている条件下では0‰の条件下と比較して、生存率の低下のほか、発生の進行の遅れ、卵の発生異常(0.5‰、0.6‰)が確認された。