| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-350 (Poster presentation)

外来種スイセンハナアブと同属在来種カワムラモモブトハナアブの訪花植物及び訪花頻度の比較

須島充昭(東大・総合文化)

外来種が日本の生態系に及ぼす可能性のある影響の一つとして、近縁在来種との競合が考えられる。ハナアブ科Merodon属は、日本では外来種と在来種が各1種知られ、外来種スイセンハナアブMerodon equestris(以下外来種)は東日本へ侵入しており、在来種カワムラモモブトハナアブMerodon kawamurae(以下在来種)は、関東以西に分布している。また両種共に成虫は年に1回、春から初夏にかけて発生する。演者はこれまでに、外来種を4地点(横浜、東京、埼玉、仙台)で合計917個体捕獲した。本研究では個体の状態(飛行中、休息中、訪花中など)に関わりなく目撃した個体全ての捕獲を試みており、外来種では訪花中の捕獲は290個体(32%)、5科14種の訪花植物を記録した。利用頻度の高い上位3種は、ハルジオン、オオアマナ、セイヨウタンポポであった。一方、在来種は2地点(埼玉、兵庫)で合計94個体を捕獲し、そのうち訪花中の捕獲は16個体(17%)、4科5種の訪花植物を記録し、利用の多い上位3種はヘビイチゴ、カンサイタンポポ、ヤマブキであった。以上の結果から、以下の点について考察する。訪花中に捕獲した個体の割合(これを訪花頻度と考えた)は、外来種の方が高く、成虫期の摂食活動はより活発である可能性がある。また両種共に、利用頻度の高い訪花植物にタンポポ属が含まれるが、種レベルでの重複はほとんどなく、成虫期の餌資源をめぐる競争関係はほとんどないと考えられる。一方、過去の知見から、両種共に幼虫は主にヒガンバナ科植物の球根を摂食すると予想され、おそらく幼虫期の餌植物の選択の幅は比較的狭い。そのため、両種が幼虫期の餌資源をめぐり競合する可能性はなお残されている。


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