| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-351 (Poster presentation)
ミツバチ寄生性のアカリンダニが、2010年の発見以降日本全国に分布を広げている。アカリンダニに寄生されたセイヨウミツバチのコロニーは冬期の死亡率が高く、海外では多くの国でセイヨウミツバチに被害をもたらしてきた。日本ではセイヨウミツバチでアカリンダニが見つからない一方、日本在来種ニホンミツバチで寄生率が高く、その原因解明が進んでいる([P2-315]ニホンミツバチとセイヨウミツバチにおけるアカリンダニに対するグルーミング行動の比較)。アカリンダニに寄生されたニホンミツバチコロニーでは、セイヨウミツバチと同様の症状が見られ、全国各地でコロニーが全滅する事例が相次いでいる。本研究では、アカリンダニがニホンミツバチにおよぼす影響を定量的に評価するため、アカリンダニ寄生がニホンミツバチの越冬成功率におよぼす影響を明らかにした。飼育されているニホンミツバチ114群について、秋のアカリンダニ寄生率と翌春までのコロニー生存率を調査し、セイヨウミツバチで行われた2つの先行研究のデータと比較した。その結果、セイヨウミツバチと同様、秋のアカリンダニ寄生率が高いコロニーほど越冬成功率は低かった。また、ニホンミツバチでは、アカリンダニ寄生率が低いコロニーでも越冬成功率の低下の程度が大きく、セイヨウミツバチよりもアカリンダニの影響を受けやすいことが明らかになった。また、アカリンダニの分布していない地域よりも、分布している地域で越冬成功率が低かった。全国的な調査の結果、8割を超えるニホンミツバチコロニーがアカリンダニに寄生されている地域もあり、局所的なニホンミツバチの減少が懸念される。