| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-355 (Poster presentation)
近年、農地を利用する生物種の減少が指摘されており、農業と生物多様性保全の両立が喫緊の課題となっている。その方策として、化学農薬・肥料の使用を低減する環境保全型農業の貢献が期待されているが、環境保全型農業の取組が植物の多様性保全に及ぼす効果を評価する手法は確立されていない。そこで、農法の異なる水田で植生を調査し、有機(無農薬)栽培圃場に特徴的に出現する指標植物種を検討した。
茨城・栃木県において、有機栽培または慣行栽培水田の田面と畦畔に面積1 m2の方形区を設置し、2013年(5地区)と2014年(4地区)の6-7月に植生調査を行った。指標種は、調査地区をブロックとする指標種分析を用い、有機栽培圃場の方に有意(IV>25%かつP<0.05)に出現する種を抽出した。
在来種数は、一部の地区で有意差が認められなかったものの、調査地区全体としては、田面、畦畔ともに有機栽培圃場の方が慣行栽培圃場より有意に多かった。
田面の指標種は、2013年、2014年とも9種が選ばれ、イヌホタルイ、ウキクサ、ウリカワ、オモダカ、コナギ、シャジクモ、ハリイの7種が共通した。畦畔の指標種は、2013年で13種、2014年で17種が選ばれ、イヌガラシ、イボクサ、オオバコ、カモジグサ、シロツメクサ、スイバ、チドメグサ、ハルジオン、ヒメジョオン、ヘビイチゴ、ヨモギの11種が共通した。
田面で共通して指標種となった7種のうち、ウキクサ、シャジクモ、ハリイを除く4種はいずれもスルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性の発達が確認された種であり(調査圃場の個体では未確認)、除草剤抵抗性集団が慣行栽培圃場では防除されているが、有機栽培圃場では逆に増加している可能性が示唆された。
なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「気候変動に対応した循環型食料生産等の確立のための技術開発」の成果である。