| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-358 (Poster presentation)
都市近郊に存在する河畔林や防風林には生物多様性にとり重要な役割を担っていると同時に野生動物と人間との軋轢の場にもなり得る。そのため、野生動物と人間との共生を目指すためには生物多様性の保全と人間との軋轢緩和のバランスのとれた管理が求められている。
そこで本研究では、北海道の石狩平野の南西部に位置する札幌市の河畔林と防風林を対象に野生動物の利用状況の把握と野生動物が利用・出没する環境の特徴を評価することを目的として、2015年5月から11月まで58台の自動撮影装置(河畔林32台、防風林26台)を用いて調査を行った。
その結果、12種の哺乳類と鳥類が撮影され、外来種であるアライグマ、ミンクも確認された。確認された12種の中でもキツネ、エゾシカ、アライグマ、タヌキの4種が多く撮影された。撮影頻度では、河畔林と防風林の地域による有意な違いが見られた。また、季節ごとの撮影頻度を比較した結果、キツネのみと有意な関係が見られ、エゾシカとは傾向が見られた。さらに、撮影時間帯との撮影頻度を比較した結果、キツネ、エゾシカ、タヌキ、エゾリスの5種と有意な関係が見られた。
野生動物の利用・出没する環境との関係を明らかにするために、4種の在・不在データを目的変数、説明変数に周辺環境(人為改変地面積や森林の連結性(IIC、分断化指数))と局所環境(パッチ面積、開空度、植被率)を合わせた6つの変数を設定し二項分布を仮定したGLMを用いて分析した。その結果、人為改変地面積とエゾシカは正の関係が、アライグマとは負の関係が認められた。森林の連結性(分断化指数)とはエゾシカを除く3種と負の関係が認められた。対象とした4種には局所環境より周辺環境の影響を受けていたため、周辺環境のコントロールが河畔林・防風林の管理に効果的であると考えられる。