| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-366 (Poster presentation)

蓮田に飛来する水鳥の食物構成の解明−メタバーコーディングを用いたアプローチ−

安藤温子(国環研),成田あゆ(京大院・農),石井淳子(多摩動物公園),会田済(茨城県),池野進(日本野鳥の会),井上智美(国環研),竹中明夫(国環研)

冬期も湛水する蓮田は、カモ類など多くの水鳥にとり重要な餌場として機能していると考えられる。しかし、蓮田に飛来する多様な水鳥が実際に何を採食しているのかはよく分かっていない。霞ヶ浦周辺の蓮田では、水鳥によるレンコンの食害が疑われており、防鳥ネットが広範囲に設置されているが、水鳥がレンコンを採食したことを示す科学的根拠は十分でない。本研究では、蓮田を利用する水鳥の将来的な採食環境の保全と食害問題の解決に役立てるため、糞に含まれる植物のDNAメタバーコーディングを行うことで、水鳥の食物構成を把握することを目的とする。

霞ヶ浦の湖岸や蓮田周辺に生育する維管束植物108種を採取し、葉緑体trnL P6loop領域の塩基配列を用いたデータベースを作成したところ、107種の塩基配列解読に成功した。このうち73%が種に特異的な塩基配列だった。

土浦市の蓮田周辺で採取した、カモ類もしくはオオバン Fulica atra の糞15個からDNAを抽出し、次世代シーケンサーIonPGMを用いて葉緑体trnL P6loop領域を解読し、作成したデータベースと照合した。その結果、ハス Nelumbo nucifera、ヨシ Phragmites australis、ウキクサ Spirodela polyrhiza、イネ科草本などが検出された。データベースと一致しない塩基配列も検出されたことから、水鳥の食物構成をより詳細に評価するためには、データベースの拡充が必要なことが示唆された。この他、今回の発表では、3カ所の調査地における水鳥の食物構成とハスの採食状況を月ごとに評価する他、カモ類が採食した植物のDNA塩基配列が糞から検出されるまでの時間についても紹介する予定である。


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