| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-369 (Poster presentation)

水田のカエルたちはどこへ? -震災後の福島県東部地域の生息状況調査から-

松島野枝(国環研・環境リスクC)

2011年に起きた東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって、福島県東部の原発周辺地域の水田では、住民の避難と農地の放射能汚染のため稲作が実施されず、急速な環境変化が起きている。耕作放棄地となった水田は乾燥化が進み、水生生物にとって生息しにくい状況である。そこで、水田をよく利用する生物である両生類を対象として、被災地域における野生生物への環境変化の影響を調べた。

福島県東部の調査地域における震災以前の両生類の調査記録がほぼないため、隣県の生息記録と3次メッシュを単位とする環境データを用いてニッチモデリングを行い、震災前と後の10種の生息適地を推定した。トウキョウダルマガエルやニホンアマガエルなど低地に生息する種では震災前に比べ震災後に生息適地とされたメッシュ数が減少したが、森林・山地を主な生息地とする種とニホンアカガエルでは震災前後で生息適地の数に変化は見られなかった。また、震災後の両生類の生息状況を明らかにするために、2013年秋と2014年春から秋にかけて現地調査を行った。75地点で調査を行い、11種の両生類が出現した。このうちニホンアカガエルは54地点、トウキョウダルマガエルは34地点で生息が確認され、さらに繁殖が確認された地点はそれぞれ50地点、22地点であった。調査地点の多くは震災前に2種の生息適地とされた地域にあったが、現在はトウキョウダルマガエルにとって生息・繁殖しにくい環境になっていると考えられる。


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