| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-371 (Poster presentation)
西日本の丘陵地に分布する湧水湿地は、絶滅危惧種や地域固有種をはじめとした希少な生物種のハビタットとして保全上の重要性が高い。ところが、面積が小さく網羅的な把握が困難なため、「どこに、どのような湿地が、どれだけ分布するのか」という、保全上・研究上重要な基礎的情報が得られていない。
この問題を解決するため、発表者らは2013年より、東海地方(愛知県・岐阜県・静岡県・三重県・長野県)を対象として、実地調査に基づく湧水湿地の目録作りに取り組んでいる。各湿地から取得した情報は、緯度経度、面積、水質、所有や管理といった社会状況、地質地形、主な植物種の在不在などである。
2016年1月までに調査を行ったおよそ1,100~1,200か所のデータに基づくと、立地する場所の標高は20~760mで、地表水のpHの平均は6.0、ECの平均は28μS/cmだった。面積は1,000m2未満が75%を占め、個別に保護区に指定されているものは数%に過ぎなかった。希少種を含む延べ120種以上の湿地植物種が確認されたが、一つの湿地に揃う種の数は限られていた。
このように、データは種の分布情報と立地環境情報を併せ持つため、さらに解析を進めることで、景観レベルでの保全戦略に役立てることができる可能性がある。なお、発表時点で調査データが十分に集まっていない地域もあるため、今後のデータ収集によって結果はいくらか変化する場合もある。