| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-374 (Poster presentation)
全国の河川域において樹林の拡大傾向が近年報告されている。本来河川域の水 際では、増水等に伴う冠水、土砂の堆積等の攪乱を受けやすいことから、植生の 疎らな礫河原や草本植生が広い範囲を占めていた。し かし、近年は河川の礫河 原が減少するとともに、かつて礫河原だった場所においても樹木の分布拡大が顕 著である。河川管理の現場に おいて河川域における樹林の拡大は、河川の流下 能力を低下させるため治水上問題とされ伐採等の対策が行われている。
本研究の対象とした利根川水系渡良瀬川の直轄管理区間においても、樹林面積 の拡大が進んでおり、伐採等の対策が進められている。本研究では、河川域にお ける植物の適切な保全・管理計画立案に資するため、 特に伐採対象となりやす い樹木種(ヤナギ類、ハリエンジュ)に着目し、分布拡大傾向とその種群間のち がいを把握することを目的と した。
解析には、対象範囲を一辺20mの 格子に区切り、各格子に「植生タイプ」および 生育環境条件に関わる変数として「比高」、分散に関わる変数として「ヤナギ類 群落(2005年)からの距離」「ハリエンジュ群落(2005年)からの距離」、攪乱 の指標として「冠水頻度」を付与したGISデータを用いた。植生タイプには、 「河川水辺の国勢調査」(2005年:植物調査(植生図)、2011年: 河川環境基 図)を用いた。
このデータを用いて、ハリエンジュ群落およびヤナギ類群落を対象に、 それぞ れの群落が2011年に新たに侵入した格子と生育環境、分散、攪乱 との関係につ いて統計モデルを用いて解析し、樹林拡大傾向のちがいの要因について考察した。