| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-375 (Poster presentation)
開発事業での移植需要が高いキンラン属は、栄養源を光合成と菌根菌・宿主樹木との共生に依存する混合栄養植物とされる。そのため、キンラン属・菌根菌・共生樹木の三者共生という特殊条件へ配慮した移植が重要である。特に、計画段階での移植適地の選定は共生環境の再構築の可否に大きく影響すると考える。
三者共生へ配慮した移植事例は多数存在する。しかし、移植地選定では、既存自生地と共生樹木の分布が重視される一方、共生環境構築の中核となる菌根菌の存在は反映されてこなかった。そこで、本研究は共生環境を構成するキンラン属・菌根菌・共生樹木の三要素に配慮した移植適地選定手法の構築を目的とした。
まず、1)都市近郊二次林の既存自生地において生育環境条件(共生・植生・光・土壌)の定量データを取得した。共生環境は、キンラン属自生株(個体位置・個体サイズ)、共生樹木(樹木位置・樹種・樹高・樹冠面積・自生株との距離)、菌根菌(根系・自生地土壌の菌根菌群集)を把握した。その結果、林床植被率の低いブナ科樹林の近傍に自生株が生育していること、主な共生菌がキンランはイボタケ科とロウタケ科、ギンランがイボタケ科であること、が解明された。
次に、2)移植適地を2段階で絞込む手法を構築した。概査(移植候補地の選定)では、生育適性モデルを設定し、毎木調査と植生のデータから移植適性の高い領域をGIS上で解析・図化する手法を構築した。解析範囲はブナ科樹木近傍とし、変数は樹冠面積と自生株の有無、林床植被率とした。一方、精査(最終移植地の絞込)では、菌根菌群集を含め、光・土壌の詳細調査を移植候補地で実施し、既存自生地の生育環境条件と比較する手法を構築した。