| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-377 (Poster presentation)

トドマツ人工林における下層植生の皆伐による変化

*明石信廣, 大野泰之(道総研林試), 新田紀敏(道総研森林研究本部)

2013年、北海道有林空知管理区内のトドマツ人工林(芦別市・深川市、47~61年生)6林分において、各林分に5×5mの方形区を7~14箇所(合計50箇所)設置し、6月から9月まで林床に生育する維管束植物の出現種を1×1mごとに記録した。2014年に5林分で、皆伐、群状保残(林分中央部の60×60mを伐採せず群状に残す)、3段階の単木保残(それぞれ10, 50, 100本/haの広葉樹林冠木を単木的に残す)により伐採を行い、1林分を伐採しない対照区とした。チェーンソーによって伐倒後、グラップルで集められた木はハーベスタによって枝払い、玉切りされて集材路から搬出された。伐採後には、地拵えとして1.5mの間隔をあけて1.5m幅で刈り払い機によってササや低木などが刈り払われ、2015年5月にトドマツ苗木が植栽された。7月に地拵えと同様に1.5m幅で下刈りが実施された。2015年5月から9月まで、伐採前と同様に出現種を記録した。伐採された方形区29箇所において、伐採前に150種が記録され、伐採1年後にはこのうち19種が消失していたが、新たに41種が出現した。伐採前に記録された外来種は3種のみであったが、伐採後に15種が加わった。非計量多次元尺度法(NMDS)の結果から、伐採前の林床植生は上層のトドマツと広葉樹の胸高断面積、最終間伐からの経過年数によって区分された。伐採されなかった方形区における2年間の植生の変化はわずかであった。伐採後には単木保残の有無に関わらず伐採地の植生は伐採による攪乱によって同じ方向に変化したが、保残木の周囲には地表の攪乱が少ない部分が残ることもあった。伐採直後に生残していた林床植物は、伐採後に侵入した植物との競争により、今後も減少すると予想される。


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