| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-400 (Poster presentation)

ナイロビ都市林における薬用樹木の多重利用の影響

*古川拓哉(森林総研), S. Kiboi, P.B.C. Mutiso (ナイロビ大), 藤原一繪(横浜市大)

薬用植物は急速に増加する途上国の都市貧困層の健康管理の需要を満たすために重要な資源である。これまで農村部における薬用植物の採取はよく研究されてきたが、都市林が実際どの程度、近隣の住民に利用されているかあまり明らかではない。本研究では、アフリカ最大級のスラムに隣接し、違法な薪炭利用が行なわれているナイロビ都市林において、樹皮の薬用植物利用のパターンを調査した。伐採も樹皮剝ぎも許可なく行われていたため、森林内に残される利用痕(切り株および樹皮剝ぎ痕)から種の嗜好性や空間パターンを分析した。14993本、93種の幹を調査した結果、その内5824本は伐採されていた。伐採されていなかった9169本の内、172本、9種に樹皮剝ぎの痕跡が見つかった。特に樹皮剝ぎが集中していたのは、現地で薬用植物として有名なWarburgia ugandensis(カネラ科)とElaeodendron buchananii(ニシキギ科)の2種だった。樹皮剝ぎは特に大径木で多く、W. ugandensisは小径木も伐採されやすい傾向が明らかになった。E. buchananiiの伐採と樹皮剝ぎはスラムに近いエリアで確率が高かった。また、レンジャーによるパトロールはどちらの種の伐採も樹皮剝ぎも抑制する効果は見られなかった。本研究の結果、都市林も一部の薬用植物の供給源として利用されていることが明らかになった。また、詳細な資源利用パターンの情報をもとにした森林管理の可能性について議論した。


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