| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-420 (Poster presentation)

ダム有り河川におけるテレメトリデータを活用したチャネルキャットフィッシュ小規模個体群の動態モデリング

*吉田誠, 佐藤克文(東大大海研), 山本大輔(矢作川研)

愛知県内を流れる矢作川では、特定外来生物チャネルキャットフィッシュが初めて確認された2005年以降、10年間にわたり本種の採集調査が行われてきたが、捕獲数が少なく個体群動態の把握は困難であった。本研究では、過去の捕獲データに加え、複数のダムで区切られた河川内における個体の移動をテレメトリ調査で追跡して得られた移動データを用い、本種個体群の動態について考察した。

2012年から2015年にかけて矢作川中流域に位置する阿摺ダムおよび越戸ダムの周辺水域にて行われたテレメトリ調査により、チャネルキャットフィッシュ8個体から3-38日間の位置情報を得た。放流個体の移動軌跡から、ダム周辺の止水域への滞留および、下流方向への長距離移動という2つの異なる行動モードが確認され、平均の滞留期間は20±16日(n=5)、移動時の平均速度は1日当たり6.3±1.5km(n=3)であった。同水域で行われた2010年から2014年までの採集調査につき、採集に用いた延縄の針数を捕獲努力量として単位努力量当たり捕獲数(CPUE)を算出し、その経年変化から個体群動態を推定したところ、調査水域全体の捕獲数およびCPUEは5年間で低下し、全体の個体数も減少していると考えられた。各ダムを個別にみると、上流の阿摺ダム周辺水域では捕獲数およびCPUEのどちらも低下しており個体数は減少傾向にある一方、下流の越戸ダム周辺水域では捕獲数の低下はみられずCPUEが上昇傾向にあったことから、個体数も増加傾向にあると考えられた。以上より、矢作川中流域におけるチャネルキャットフィッシュ個体群の分布は、個体が時折みせる下流方向への移動に伴いより下流のダムへ移りつつあると考えられる。


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