| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-428 (Poster presentation)

高緯度北極ミツユビカモメ営巣崖の崖錐土壌の高い硝化・脱窒能

*林健太郎(農環研), 田邊優貴子(極地研), 小野圭介(農環研), Maarten JJE Loonen(フローニンゲン大), 内田雅己(極地研), 早津雅仁(農環研)

海鳥営巣地は海から陸への物質輸送が生じるユニークな場であり,生物生産が遅いツンドラ生態系では特に窒素循環のホットスポットになると予想される.本研究は,スバールバル諸島ブロムストランド島北岸の海鳥営巣崖(ミツユビカモメ約400番い,フルマカモメ少数)を対象とし,直下の崖錐土壌の硝化・脱窒能および現地の一酸化二窒素(N2O)放出実態の解明を目的とした.営巣崖に接する崖錐は,基部標高約20m,上端標高約150m,傾斜約40°である.崖錐上部(U,標高約140m),中部(M,約100m),および下部(L,約50m),また,崖錐の北東にあり,20世紀後半まで氷河に覆われていた対照地(C,約20m)に各3箇所の調査地点を設けた.各調査地点において土壌採取およびN2Oフラックス測定を3連で行い,土壌試料はコンポジットした.硝化・脱窒能は生土,N2Oフラックスは採取ガスを日本に持ち帰り定量した.硝化・脱窒能は2段階の温度条件(10,20℃)で求めた.崖錐土壌は有機質で,硝化・脱窒能はきわめて高く,営巣崖に近いUで最も高かった.10℃の硝化能はUで944 ± 278(標準偏差),Cで0.98 ± 0.13,同じく脱窒能はUで4880 ± 1060,Cで8.8 ± 3.0 ng N g–1乾土 hr–1であった.10℃に対する20℃の硝化能と脱窒能はそれぞれ約2.6,2.2倍高かった.現地ではN2O放出が確認され,崖錐土壌は大きな値を示した.放出フラックスはUで0.67 ± 0.45,Cで0.037 ± 0.049 ng N cm–2 hr–1であった.


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