| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-434 (Poster presentation)

37年間NP施肥を続けたトドマツ林における土壌CO2フラックスとリター分解速度

*橋本徹,相澤州平,伊藤江利子(森林総研北海道)

人為由来による大気中活性窒素の増加は、森林生態系の炭素・窒素循環に様々な影響をもたらす。森林土壌CO2フラックスは巨大な炭素ストックである森林土壌からのCO2放出過程である。その土壌CO2フラックスは窒素付加によって減少する一方、リター分解速度は窒素付加によってあまり変化しないと言われている。しかし、そのような土壌CO2フラックスの変化が、長期的な窒素付加に対して同じような傾向を維持し続けるのかはわかっていない。そこで、37年間窒素とリンを施肥し続けているトドマツ林において、土壌CO2フラックスとリター分解速度を測定した。

1973年に植栽し、1978年から施肥を始めたトドマツ林をNP施肥(NP)区、対照1(C1)区、NPを6年間施肥した(6Y)区、対照2(C2)区の4区に分けた。それぞれの区に4カ所の測定ポイントを設定した。それぞれの測定ポイントにチャンバーを埋設し、密閉法で土壌CO2フラックスを測定した。測定は2015年の4月から11月にかけて不定期に11回測定した。また、リター分解速度を測定するために、それぞれの測定ポイント近傍に6−8月、7−9月の3ヶ月間ずつリプトンのルイボス茶と緑茶ティーバッグを土壌に埋設し、分解に伴う重量変化を測定した。

土壌CO2フラックスに、処理区間差は見られなかった。土壌CO2フラックスの空間変動は土壌含水率(TDR)との相関が高かった。この土壌含水率の傾度は、微地形によるものと推定した。一方で、初期リター分解係数kとリター蓄積量は、NP区で高い傾向が見られた。今回の結果は、既存の知見と合致しなかった。長期施肥によって微生物群集や樹木が施肥環境に順化している可能性が考えられるが、今回の調査からはその機構の推定までは困難であった。


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