| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-446 (Poster presentation)

高緯度北極湿原におけるCH4, N2Oフラックスの空間および季節変動

*大浦典子,岸本(莫)文紅,米村正一郎(農環研),廣田充(筑波大・生命環境),飯村康夫(滋賀県立大・環境科学),内田雅己(極地研・総研大),増本翔太(極地研),中坪孝之(広大院・生物圏)

有機炭素蓄積量が多い高緯度地域の湿原は、温暖化に対し最も脆弱な地域であると言われており、その影響調査が急務となっている。気候変動に伴う雪解け期間の延長や活動層の拡大などの環境変化がCH4やN2Oのフラックスに与える影響を評価するための基礎データを得るため、スバールバル諸島、ニーオルスン付近の湿原においてガスフラックス調査を行った。湿原を横断するような約300mのラインを設置し、そのライン上に8つの調査地点(比高低差約20m)を設け、ガスフラックスの空間変動および季節変動を調査した。

2013年7月の約1か月間に4-5回のフラックス測定を実施した結果、湿原下部では、7月上旬から後半に向けてCH4の放出フラックスが増加する傾向が捉えられた(<60-350 ug CH4-C m-2 h-1)。一方、湿原中部では7月後半には酸化還元電位は低下したが、CH4の放出は認められなかった。湿原上部の乾燥しているサイトでは、地下水位の変動によりCH4フラックスは放出または吸収と変動した。一方、湿原におけるN2O放出は1か月を通じて非常に低く推移した。ただし、湿原上部の斜面では、N2Oの放出が捉えられ(20-40ug N2O-N m-2 h-1)発生ポテンシャルがあることが示された。

以上の結果、湿原におけるCH4、N2Oフラックスは、微地形の違いに基づく空間変動が大きいこと、加えて融雪に伴う湿原への流入水量の変化や気象要因による生物活動(光合成、呼吸、分解など)の変化に伴う環境変動(酸化還元電位や地温など)によりCH4、N2Oフラックスの季節変動も大きいことが示された。


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