| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-448 (Poster presentation)

放射性炭素同位体による海草の大気由来CO2同化の定量化

*渡辺謙太,桑江朝比呂(港空研)

海草藻類などの沈水植物は,水柱の溶存無機炭素(DIC)を主な炭素源として利用している.海生の海草藻類は低潮位時にその葉部が大気中に暴露されることで,水柱を経由せずに直接大気由来CO2を同化していることがこれまでの研究で示唆されている.しかしながら,大気由来CO2の炭素同化に対する寄与についてはこれまで定量評価することが出来なかった.本研究では,放射性炭素同位体濃度(Δ14C)を用いて,北海道風蓮湖の浅海域に群生するアマモ(Zostera marina)における大気由来CO2同化の寄与率を定量化した.アマモ草体中のΔ14C(−40‰~−10‰)は水柱DIC(−46‰~−18‰)よりも有意に高く,アマモが14C濃度の高い炭素源である大気由来CO2(+17‰)を利用していることが示された.炭素源としてDICと大気由来CO2を仮定した炭素源混合モデルの結果から,風蓮湖のアマモは0~40%(平均17%)の炭素を大気由来CO2から同化していることが推定された.大気-海草間のCO2ガス交換は,大気へ露出した際に葉上にわずかに残る水の薄膜を介して行われると考えられる.放射性炭素同位体を用いた解析によって,これまで定量化できなかった海草による大気由来CO2の炭素同化に対する寄与が明らかとなった.今後は,海草による大気由来CO2同化がCO2ガス交換量に与える影響を定量化していくことが必要である.


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