| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-468 (Poster presentation)

森林生態系の栄養塩動態における火山灰加入の影響

源六孝典*,小野田雄介(京大・農・森林生態),丹羽慈(自然研),饗庭正寛,黒川紘子(東北大・生命科学),北山兼弘(京大・農・森林生態)

日本の森林土壌の多くは火山灰の影響を受けている。火山灰はリンなどのミネラルを含む一方で、火山ガラスの風化過程で生成されるアロフェン・イモゴライトやAl・Fe-腐植複合体のもつリン吸着作用により、植物にリン欠乏を引き起こすことが土壌学分野において広く知られている。しかしこの知見がリン施肥量と作物収量との関係に基づき得られた、いわば畑地における常識であることや、木本・草本間では有機酸放出量など栄養獲得様式が大きく異なることを鑑みれば、森林植生が降灰によって増えたリンを利用することで畑地と逆の現象が起こる可能性が考えられる。

本研究では日本全国に設置された環境省モニタリングサイト1000から複数の森林サイトを利用させて頂き、火山灰由来物質の存在量を示すAlo・Feo(酸性シュウ酸塩抽出アルミニウム・鉄)濃度、及び樹冠生葉窒素・リン含量のサイト内優占率を用いた重み付け平均値を基に、火山灰加入が林分レベルでのリン可給性を上昇させると仮説を立て、検証した。

土壌中の火山灰由来物質濃度(Alo+Feo/2)が多いサイトは、生葉リン含量が生葉窒素含量と比べ相対的に多いことが分かり、畑地での定説とは異なり火山灰の影響が強い森林ほど樹木は相対的にリンが潤沢な状態にあることを示す結果を得た。つまり仮説は支持され、森林生態系には火山灰由来物質によるリン吸着を克服する機構が存在することが示唆された。世界的に見た日本の森林の栄養塩状態の特異性を示しており、火山国の森林物質循環を理解する上で重要な知見であると考えられる。


日本生態学会