| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T06-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

気候変動を考慮に入れた自然保護対策の構想-長野県における検討状況-

陸 斉・須賀 丈・浜田 崇・*堀田昌伸・尾関雅章(長野県環境保全研究所)

温暖化の進行により、種の分布適域の変化、生物季節の変化、生物間相互作用の再編等、生態系への影響が懸念されている。しかし、不明な点が多いためモニタリングの重要性が指摘されている。温暖化対策としては、緩和策だけでなく適応策も重要であるが、国の適応計画(2015)では、モニタリングの必要性や従来の保全策、生態系ネットワークの形成等の記載にとどまっている。

長野県は「生物多様性ながの県戦略」(2012)を策定し、温暖化に関連して「高山環境の保全」と「温暖化対策を見直し、実効性の高い施策に再構築」の必要性を述べているが、適応策の具体的な記述はない。一方、改訂した県版レッドリスト(2014, 2015)では、維管束植物や昆虫類で、ランクの高い絶滅危惧種の分布情報等から北アルプス北部や八ヶ岳の高山帯、霧ヶ峰の半自然草原等のホットスポットが抽出されており、その保全が課題となっている。

研究所では、環境省推進費S-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」(2010〜2014年度)の中で、ライチョウ等山岳生態系の温暖化影響予測と評価や高山帯のモニタリング等を行うとともに、県内の気候変動に関する観測データや研究情報を収集・提供するための「信州・気候変動モニタリングネットワーク」を構築した。また、「気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)」(2015〜2019年度)に参画しており、農林業、防災、生態系の各分野で適応策を検討し、分野別に適応を検討・推進する場として「信州・気候変動適応プラットホーム」の設立を検討している。生態系分野では、森林、生物多様性ホットスポット、ライチョウの生息適域等の影響評価を行い、それをふまえた生態系ネットワーク等の土地利用指針、垂直分布を生かした移動経路の確保、ライチョウの保全策等を検討する。


日本生態学会