| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T09-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

個体数密度と土地利用から農業被害を予測する:房総半島のニホンジカとイノシシにおけるケーススタディ

*鈴木牧, 香川幸太郎(東大・新領域)

千葉県房総半島では、ニホンジカやイノシシなどの大型哺乳類による農作物への被害が問題となっている。被害が発生する地域を予測できれば、農業被害への対策を立てる上で有用である。被害の発生量は、①動物の個体数密度と②動物の行動パターンによって決まると考えられる。動物の密度が同じでも、畑に現れる頻度や採餌行動の活発さによって被害量は変化する。したがって、地域ごとの景観や土地利用タイプが動物の行動や分布の変化を介して被害の発生量に影響を与えることが予想される。

本研究では、ニホンジカおよびイノシシによる農業被害の発生量を、地域ごとの個体数密度と各土地利用タイプの面積から予測する統計モデルを構築した。土地利用タイプによって、個体数密度あたりの被害量が変化すると仮定した。統計モデルの構築に用いた地域ごとの被害状況のデータは、農家に対するアンケート調査を通じて取得した。また、地域ごとのシカとイノシシの個体数密度は、先行研究で構築されたシミュレーションモデルを用いて推定した。地域ごとの各土地利用タイプの面積は、国土交通省による国土数値情報に基づいた。いくつかの土地利用タイプ間で面積に相関がみられ、このことがパラメーターの推定精度を下げる可能性があった。この問題に対処するため、土地利用データを要約した指数を用いるなどの方法を検討した。さらに、既知のパラメーター値の下で人工的に生成したデータを使い、パラメーター推定の精度を評価した。

統計モデルの構築に用いた、アンケート調査に基づく被害状況や、シカ・イノシシの推定密度には不確実性が含まれる。本発表では、構築した統計モデルの予測結果と、そこに含まれる不確実性について考察し、農業被害に対する適切な対策を議論したい。


日本生態学会