| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T09-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

北海道のエゾシカ個体数推定:ベイズ推定に伴う問題を回避する方法について

山村光司(農環研)

野生生物の個体数を推定する際に,計算の簡便さから近年ではBayes(1763)流のベイズ推定法が用いられることが多い。Bayes流のベイズ推定法は事前情報が存在しない場合に一様事前分布を仮定することを特徴としている。MCMC法に基づくソフトウエアを用いることにより,ベイズ推定法では複雑な推定問題も簡単に解決できそうに見える。Fisher(1922)はこのベイズ推定法の致命的な欠陥を指摘し,Bayes流のベイズ推定法に代わるものとして最尤推定法を創出した。分析の前に行う変数変換法を変えれば,ベイズ推定法ではいくらでも異なる推定値を捏造することができる。これがFisherの指摘したベイズ推定法の問題点であった。しかし,事後分布が左右対称に近くなるような適切な変数変換法を用いれば,事後分布のメディアンを最尤推定値の近似値として活用することができる(Yamamura. 2016)。そのような変数変換法は,事後分布の歪度がゼロに近くなるようなBox-Cox変換などを探すことによって試行錯誤的に見つけることができる。また,パラメーター値が変わればそのパラメーターの事後分布が平行移動するような場合,つまりBox and Tiao(1973)がdata translatedと呼んだような性質が成り立つ場合には,事後分布の分位点をFisher(1973)流の信頼限界として用いることができる。たとえば2.5%分位点を下側2.5%信頼限界として用いることができる。Data translatedな状況では事後分布が左右対称になりやすいことから,事後分布の歪度がゼロに近くなるような変数変換法を用いれば,事後分布のメディアンを最尤推定値として用い,かつ,事後分布の分位点を信頼限界として用いることができると期待できる。本講演では,北海道のエゾシカ個体数推定を例として,このような推定手順について示したい。


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