| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T13-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

保残伐のレビューと北海道での大規模実験の概要

尾崎研一(森林総研・北海道)

保残伐とは主伐時に一部の樹木を残して複雑な森林構造を維持することにより、多様な生物の生息場所を確保する伐採方法のことである。近年、皆伐による生物多様性や生態系機能の低下を抑えながら木材を生産する方法として世界的に広まっている。北欧諸国では森林認証制度に組み込まれることで広く普及しており、米国北西部では生立木の少なくとも15%を保残するように規定されている。わが国では1,000万haの人工林が主伐期を迎え、森林の公益的機能と木材生産を両立させる伐採方法の開発が求められている。しかし保残伐は日本を含むアジア地域ではほとんど行われておらず、人工林への適用例もない。そこで2013年度から北海道、森林総研北海道支所、北海道大学農学部森林科学科、道総研林業試験場が共同で、北海道有林をフィールドとして「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験(略称:REFRESH)」を開始した。この大規模実験では、林齢が50年生以上のトドマツ人工林と広葉樹天然林に多くの実験区(1区画5~8ha)を設け、単木で木を残す(単木保残)、または、ある範囲の木をまとめて残す(群状保残)等の方法で伐採を行っている。単木保残では、人工林内の広葉樹を残すことで、広葉樹、枯死木、大径木を必要とする生物の保全をめざす。実験区は3つのセットからなり、伐採前の調査を行ってから、毎年1セットずつ伐採を行っている。伐採後はトドマツを植栽し人工林を再生する。各実験区では、植物、鳥類、昆虫の多様性、水土保全機能、木材生産性、さらに生態系サービスを調べている。そして、人工林において保残方法や保残率の違いが生物多様性や生態系サービスに与える影響を実証規模で明らかにしていく。これらの結果をもとに、木材生産と公益的機能の両立をめざす持続的な人工林管理技術を提案することを目標としている。


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