| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T24-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

土壌システムの空間的不均一性と物質の循環:有機物動態を団粒構造から捉え直す

和穎朗太(農環研)

陸上生態系が水域生態系と最も大きく異なる点は、空間的不均一性ではないだろうか。陸上一次生産者(植物)の空間的不均一性は、第一に気候・地質・地形などのマクロ因子によって生じる。一方、分解者群集および有機物や栄養塩といった土壌資源の不均一性は、ミクロスケールにおける土壌の物理化学環境に大きく支配される。土壌環境を理解する上で最も重要な現象として、有機物と鉱物の相互作用があげられる。植物や微生物の作り出す有機物が土壌中で鉱物と相互作用することで、ナノスケールでは「有機・無機複合体」と呼ばれ、ミリ~センチメートルスケールでは「土壌団粒」と呼ばれる3次元構造が形成される。この有機物と鉱物によって組み立てられている階層的構造が、土壌に炭素貯留、養分供給、ガス・pH調整などの多機能を発現させ、「つち」(土壌)を「ドロ」や「砂」(堆積物や一次鉱物)と本質的に異なる環境物質にしている。

私達は、この団粒階層構造というフレームワークの中で陸域最大の炭素プールである土壌有機物の形成および微生物による代謝を捉え直すことに挑戦している。ここでは、表層火山灰土壌を対象に、異なる階層レベルにおける土壌構造の形態的および生物地球化学的な特性を調べ、団粒形成と土壌有機物の動態について考察した研究を紹介したい。先ず、ナトリウム飽和後に超音波処理を行い、最大限に分散させた後の粒子(一次構造)を粒径ごとに分画した。次に、同じ土壌を弱い力(機械振とう)で分散させ、残存する団粒化した粒子(二次構造)を比重に応じて分画した。各画分の炭素・窒素同位体、炭素の分子構造、物理特性の分析から、一次、二次構造の形態的および理化学的特徴を整理し、微生物の役割、物質循環プロセス等の視点から議論したい。


日本生態学会