| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T24-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

海洋水塊構造と有機物量によって決定される微生物を介した物質循環過程

横川太一(海洋研究開発機構)

従来の海洋生物を対象とした観測では,気候帯にそった海洋区分あるいは水塊構造によって区分された区画の調査およびその結果の解釈が行われてきた.しかし実際には,従来もちいられてきた時空間的な区分よりも,より小さな環境区画において,微生物の動態を支配する環境要因が形成されることが分かってきた.とくに近年の研究手法の発展で,いままで検出できなかった微生物の動態や化合物が定量できるようになったことにより,海洋生態系の物理化学的な構造は不均一であり,低次生態系は強くその影響を受けていることが明らかにされた.本発表では,まず,海洋生態系の物質循環過程において細菌群集が果たす役割について簡単にまとめて紹介する.つぎに,これまでの調査研究により明らかにしてきた(1)海洋に生息する細菌群集の細菌数,活性,構造は,物理化学的(水塊,沈降有機物粒子量)な構造に付随する空間に支配されていること,(2)微生物群集の活動の産物である無機化合物(窒素化合物,リン酸,炭酸塩)の分布およびその量は微生物の活性に大きく依存することを背景として紹介する,最後に,細菌生物量・生産量の広域高解像度空間分布データの解析結果から明らかになってきた海洋深層での細菌群集を介した炭素循環過程を提案し,議論する.


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