| 要旨トップ | ESJ63 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
自由集会 W05 -- 3月21日 17:30-19:30 RoomE
2011年3月11日の大地震と大津波は、東北地方太平洋岸の生態系にも非常に大きな変化をもたらした。おそらく数百年に一度しか起こらない自然の変化を記録しようと、様々な専門家が津波被災地を訪れたが、専門的研究機関の少ないこの地域では、アマチュアを含む地元の研究者たちが果たした役割も非常に大きかった。
地域の自然に何らかの変化が起きた時、それを記述するために欠かせないのは、比較対象となる「変化以前の状態」を記録した標本や観測データであり、それらを収集しているのは、主に地元の研究者や愛好家たちである。大津波後も継続された彼らの調査活動は、学術論文として広く知られることはあまりないが、数多くの研究成果の中でも重要な位置を占めている。
博物館等の社会教育機関は、地域の人々が収集した自然史資料を蓄積し活用するとともに、新たな収集の担い手を育てていくという社会的役割を担っている。東北地方太平洋岸地域にも、数こそ少ないが自然史資料を収集する博物館があり、東日本大震災の発生後、それらが担っていた役割の大きさが改めて痛切に認識されることとなった。彼らは大震災で甚大な被害を受けながらも、その役割を再び担おうと今も奮闘中である。
この集会では、大津波後の宮城県において生態系の調査がどのように行われたのか、地元の研究者や愛好家の方々から3つの事例を報告していただく。「地域の自然の変化を記録する」仕事の重要性と、大規模災害によって浮き彫りとなった社会的課題を改めて見つめ直す機会としたい。
事例報告予定者:太齋彰浩(南三陸町)、杉山多喜子・葛西英明・惠美泰子(宮城植物の会)、ほか1組を予定