| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-05  (Oral presentation)

トキの繁殖成功を制限しているのは何か?

*永田尚志, 油田照秋, 中津弘(新潟大学・研究推進・CTER)

2008年から佐渡島ではトキの再導入が実施され、過去9年間で251羽のときが放鳥されている。昨年大会で報告したように、放鳥個体の年生残率は0.77と比較的高いが育雛形態や病歴などの飼育履歴が生存に影響を与えていることがわかっている。2012年から毎年、野外でヒナが巣立っているものの、過去5年間の雌あたりの繁殖成功率は平均0.21 (Range:0.13-0.36)と低く、まだ、自立個体群を維持できる状態にはない。佐渡では、これまでに2010年〜2015年にかけてのべ169巣の繁殖成績が記録されている。このうち、すくなくとも1羽の雛を巣立たせた繁殖成功巣は14.7%(25巣)しかなく、11羽の雄と16羽の雌が雛を巣立たせているに過ぎない。雌雄の孵化形態、育雛形態、年齢、野外での成功履歴、初卵日などが繁殖成功にどのような影響を与えているかを一般化線形モデル(GLM)で解析した。その結果、繁殖成功にもっとも大きな影響を与えているのは初卵日と野外での繁殖履歴であり、早く繁殖開始した繁殖成功履歴がある番いほど繁殖成功率が高かった。このほかにも、繁殖成績に影響を与える要因として、生息密度、天敵密度、採餌ハビタットや営巣地などの生息環境等の生態学的要因が考えられる。今回は、これらの生態学的要因に関する予備的な解析結果を報告する予定である。なお、本研究は環境研究総合推進費の補助を受けて実施した内容を含んでいる。


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