| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-06  (Oral presentation)

カメノコハムシ類がもつ共生細菌の多様性と二者間の共進化関係を探る

*福森香代子(産総研), 古賀隆一(産総研), 篠原忠(神戸大), 棚橋薫彦(産総研), 池田紘士(弘前大), 深津武馬(産総研)

アブラムシやカメムシなどの植食性昆虫が体内に保有する必須共生細菌は宿主の正常な成長や繁殖に不可欠であることが知られている。甲虫目ハムシ科は、世界から37,000種以上が知られる大きな植食性昆虫のグループである。古い組織学的記載により数種のハムシ類において共生細菌の存在が知られていたが、その微生物学的実態は不明であった。本研究では、日本産カメノコハムシ亜科21種について共生細菌を同定し、その多様性および宿主との共進化関係について明らかにすることを目的とした。

カメノコハムシ類における共生細菌の体内局在をFISH法で可視化したところ、多くの種で雌雄ともに前腸と中腸の間に2個または4個の小さな共生器官が見られたが、数種からは共生器官が見いだされなかった。雌の卵巣の近傍に次世代への共生細菌伝達に関わると思われる器官を同定した。細菌16S rRNA遺伝子の系統解析の結果、中腸前方の共生器官および雌の伝達器官には同じ細菌が優占しており、ガンマプロテオバクテリア綱に属する新規共生細菌であることが判明した。共生細菌とカメノコハムシ類それぞれにおいて3つの遺伝子領域(共生細菌:16S rRNA, gyrB, groEL、カメノコハムシ類:COI, 16S, 28S)の塩基配列をもとに系統樹を作成したところ、共生細菌の系統関係は宿主カメノコハムシ類の系統関係と一致する傾向にあり、両者の共進化関係が示唆された。多くの種で高度に保存され、器官レベルの特殊化も見られることから、この共生細菌はカメノコハムシ類において重要な生理機能をもつ可能性が示唆された。


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