| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-09  (Oral presentation)

砂質干潟における大型底生魚アカエイの摂餌場選択性

*竹内清治, 玉置昭夫(長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科)

アカエイは冠水時に干潟域に進入し、胸ビレ等を使って砂を掘ることで底質中の餌生物(主に十脚甲殻類スナモグリ)を捕獲する。その結果、干潟には半回転楕円体状の摂餌痕が多数形成され、ベントス群集にはギャップが生じる。このギャップの時空間的動態は干潟全域での環境異質性に反応したアカエイの摂餌場選択により決まる。一般にエイ類の捕食圧は餌密度と正の相関関係にある。一方、この関係性はときに観察されないが、その原因はわかっていない。演者らはこれまでにドローンを使った連日空撮調査によりアカエイの摂餌場選択性の経日変化を明らかにしてきた:(1)摂餌可能域は水位により決まり、限界進入水位は体サイズと正の相関関係にある;(2)摂餌痕密度は低潮帯で高い(20個/100 m2);(3)一度摂餌された場所は最低3日間利用されない。ここでは上記特性が餌密度依存性に与える影響を調べる。はじめに、先行研究結果の再解析(摂餌痕密度を目的変数、餌密度と水位、両変数の交互作用項を説明変数、調査日をランダム効果とした一般化線形混合モデル)により、潮位勾配に沿った餌密度依存性の推移を調べた。さらに、野外観察結果を考慮した個体ベースモデル・シミュレーション(各個体は餌密度最高地点を選択できるが、既に摂餌された場所は指定日数の間、利用できない)により、個体間相互作用が餌密度依存性に与える影響を調べた:平均摂餌痕面積(A = 0.1-0.25 m2)、平均摂餌痕密度(P = 5-30個/100 m2)、再利用までの日数(R = 0-10日)。前者の結果では、正の餌密度依存性は高潮帯で顕著にみられ、沖側に向けて弱まった。後者の結果では、餌密度依存性はPとR(または片方)の増大により消失した。以上より、低潮帯における餌密度依存性の消失が水位による摂餌可能域の制限とアカエイの個体間相互作用により説明可能であることが示唆された。


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