| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-10  (Oral presentation)

クリ(Castanea crenata)林の花粉生産量(予報)−古植生復元の基礎資料として

*高原光(京都府立大学・生命環境), 三宅悠平(京都府立大学・生命環境), 佐々木尚子(京都府立大学・生命環境), 杉田真哉(タリン大学・生態研)

 クリは,縄文時代の多くの遺跡から果実が出土しており(吉川純子,2011),また,各地の花粉分析においても,クリ属花粉の出現率の高い地点が多く認められている(吉川昌伸,2011,Inoue et al, 2010など)。
 Sugita (2007a, 2007b)は,化石花粉組成から植生の空間的広がりを客観的に復元する方法として, Landscape Reconstruction Algorithm (LRA)を開発した。LRAにはパラメターとして,花粉生産量と花粉落下速度が必要である。しかし,クリの花粉生産量については,齋藤ほか(2012)による中国原産のC. mollissima(5ヶ年の値 7.7〜35.6,平均値22.5(1012個/ha))の報告があるが,日本産のC. crenata について,ほとんどデータがないのが現状である。
 そこで京都市左京区久多八丁平のクリ天然生二次林(平均DBH 51.7 cm)において, 2015年から花粉生産量の調査を行っている。プロット(20 m×45 m)内にリタートラップ12個を設置し,雄花序落下量を測定した。また,別に未開花の雄花序を複数個体から採取し,この中の葯中の花粉数を計数して,雄花序あたりの花粉数を求め,これにリタートラップで推定した単位面積あたりの年間雄花序落下量を乗じて花粉生産量を推定した。この林分における2015年のクリ花粉生産量は31.5(1012個/ha)であった。クリは単性花と両性花を持っているが,2015年には単性花が6月中旬に満開となり,7月には両性花が開花した。2016年については集計中であるが, 6月の開花は少なく,7月には両性花が開花した。このように年による単性花と両性花の着花量が異なっていた。花粉生産量の年変動は大きいと考えられるので,今後も調査を継続する計画である。


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