| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-04  (Oral presentation)

マナマコの生息地選択にかかる要因について

*白石恭輔, 北山進一(共和コンクリート工業(株))

 沖縄を除く日本各地に分布するマナマコは、古くから食用として利用され、海の環境保全・改善も担う重要な生物である。近年では中国における需要拡大に伴い価格高騰したことで、急激に漁獲量が伸びたため資源の減少が危惧され、適切な資源の管理・保護が必要となっている。最近では種苗生産技術が確立されつつあり、さらに各沿岸地先では稚ナマコの種苗放流や、放流した稚ナマコの生息場所として、カキ殻やホタテ殻、礫を詰めて作製した礁の設置を行うなど盛んに資源保護に取り組んでいる。
 しかしながら、追跡調査が困難なことから未だ放流効果は不透明であり、設置した礁についても大半の個体が離散してしまう事例が多く保護や増殖に結びついていない。また、貝殻を礁に用いた場合、耐用年数が低く半永久的に使用できないことも問題となっている。さらに、マナマコの生態学的な知見は乏しく、特に行動に関する定量的なデータが少なく改善も難しいのが現状である。
 そこで本研究ではマナマコが好む生息地環境の解明を目的とし実験を行った。まず初めに、材質、空隙率、空間の大きさのいずれの要因が、選択性に影響するかを検討した。実験には良好な生息環境を作り出すとして頻繁に用いられるカキ殻、ホタテ殻、調達が容易なため使用頻度の高い礫の他、砕いた素焼き管を用いた。素焼き材は耐久性が高く空間も作りやすいため、カキ殻やホタテ殻の代用品になると期待し使用した。それぞれの素材をメッシュ状のプラスチックボックスに詰め空隙率を算出したのち、室内では選択実験を、野外では蝟集実験を行いボックスの中に入った個体数を比較した。室内実験では同時に光環境、流れの有無が選択性に及ぼす影響についても検証した。次に体サイズ(標準体長)と選択する空間の大きさの関係について検証した。結果として、マナマコの生息地選択は材質に依存しておらず、空間の大きさが重要であることが示された。


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