| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-05  (Oral presentation)

アメリカザリガニ連続捕獲装置の開発

*高橋清孝(NPOシナイモツゴ郷の会)

アメリカザリガニの食害による影響は池沼の生態系レジームシフトを引き起こすほど深刻であることから対策が急がれている。低密度管理するためアナゴカゴなどのトラップによる捕獲が一般的に行われている。しかし、既存のトラップは、蝟集範囲が狭く持続期間も短いので多数設置し頻繁に捕獲回収しなければならず、多くの人手を要するため取り組みは限定的である。設置期間の延長、設置間隔の拡張および耐久性の強化を実現するため、連続捕獲装置を開発し実証実験を行った。
本装置は捕獲部のA室と回収部のB室、水上の自動給餌器と給餌用ダクトから成っている。まず、アメリカザリガニの旺盛な食欲を利用し、A室に餌を1日1~2回投与して蝟集させることによりA室側面の入り口から侵入を促す。次に、アメリカザリガニには危険を察知すると暗所へ移動する習性が認められることから、B室を遮光ネットで暗くすることにより、餌を食べ終わったアメリカザリガニをA室からB室へ移動させる。A 室からB室への入り口は漏斗状になっているので脱出が困難である。このため、A室は生息密度が低く保たれ、侵入しやすい環境を持続させることができる。毎日、自動給餌器で餌を投入することにより、A室への侵入とB室への移動が繰り返される。また、捕獲回収装置を2階構造とし明室を水面近くの2階へ、暗室を1階へ配置することにより、透明度の低い水域でも使用可能になった。
誘引餌としては蝟集効果などからコイ養殖用配合飼料(ペレット)が適していた。本装置を7日間設置した時の蝟集範囲は標識再捕調査などにより半径10m以上と推定され、設置間隔は20~30mが適当と考えられた。2,500m2のため池へ本装置1~5台を6月25日から約6か月間設置して捕獲実験を行った。6~9月には1週間に1回の回収作業で55~196尾/台、平均105.4尾/台を捕獲し、アナゴカゴに比べ5~10倍の捕獲が可能であった。本装置は特許申請中である。


日本生態学会