| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-04  (Oral presentation)

カラスノエンドウをめぐる昆虫群集の不思議な関係

*笠井敦(静岡大学農学部)

カラスノエンドウ Vicia sativa subsp. nigra の花外密腺に誘引されるクロヤマアリ Formica japonica は、春期にカラスノエンドウ上で優占するソラマメヒゲナガアブラムシ Megoura crassicauda の天敵ナナホシテントウ Coccinella septempunctata をしばしば攻撃する。一方、ソラマメヒゲナガアブラムシはアリを随伴しないにもかかわらず、クロヤマアリによって攻撃されない。つまりこれらのことは、植物が雇用する用心棒が、雇用者である植物ではなく、その植物の天敵である植食者を保護していることを意味する。ソラマメヒゲナガアブラムシとカラスノエンドウとの間にある関係について調査したところ、ソラマメヒゲナガアブラムシの寄生はカラスノエンドウの花芽形成を遅れさせるものの、枯らすことはなく、ソラマメヒゲナガアブラムシの寄生有無や寄生密度はカラスノエンドウの最終的な種子生産数に影響しなかった。また、カラスノエンドウの花外蜜腺がクロヤマアリに利用されている場合、ソラマメヒゲナガアブラムシによる寄生率は増加した。これらの結果から、ソラマメヒゲナガアブラムシがカラスノエンドウに対して、寄生による損失を上回る何らかの利益をもたらしている可能性が示唆された。


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