| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-A-025  (Poster presentation)

ゲノム解析から明らかになった遡河回遊魚サクラマスの地域間遺伝分化

*渥美圭佑, 守田航大, 小泉逸郎(北海道大学環境科学院)

水産重要種では,その資源管理単位を把握するために遺伝構造を理解することが重要である。北日本を中心に分布する水産重要種・サクラマスは,海に降り回遊する生活史を持つが,高い母川回帰性のため集団は地理的に分化していることが知られている。ミトコンドリアDNA(1遺伝子座)・核マイクロサテライト(6遺伝子座)を用いた解析により,北海道内においても地域ごとに異なった遺伝的特徴をもつことがわかっている。
本研究では,次世代シーケンサーを使用したRAD-seqにより北海道各地10地点から得たサクラマス183個体の各ゲノムを解析した。高品質なリードを選抜したところ,日本海側の北部から南部にかけての5地点から得た134個体が有効であることが分かり,最終的に193の一塩基多型(SNP)が集団遺伝解析に有効であると判断された。上記のSNPマーカーを用いFSTを算出したところ,先行研究とは異なり,地点間の遺伝的分化が小さいことが示された。ただし,中部の集団は北部・南部の集団と遺伝的に異なることが示された。
従来,100か所以上のSNPを用いた解析はマイクロサテライト解析と同様あるいはより詳細に集団間分化を明らかにするとされてきた。先行研究と本研究の結果の食い違いの要因としては,(1)使用個体数に対し有効なSNPマーカー数が少なかった,(2)ゲノムワイドでの集団間遺伝分化は,集団内の多様性に対して小さい,といった可能性が考えられる。


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