| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-066  (Poster presentation)

降水量と家畜食害強度の違いがモンゴル草原のアーバスキュラー菌根菌群集に与える影響

*日下部亮太(館山総合高校), 谷口武士(鳥取大・乾地研), Undarmaa, Jamssran(モンゴル生命科学大), 山中典和(鳥取大・乾地研), Goomaral, Altansukh(モンゴル生命科学大), 大和政秀(千葉大・教育)

近年、モンゴルのステップ草原では過放牧による植生劣化が深刻化している。アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は宿主植物に様々な利益をもたらすため、草原植生の維持・回復においても重要な役割を果たすと考えられる。一方、AM菌は炭素源を植物に完全に依存していることから、植生劣化もまたAM菌に影響を与えることが予想される。本研究は家畜の食害がAM菌群集に与える影響を明らかにすることを目的とし、降水量と食害強度の異なる地点でAM菌の群集構造を調査した。

調査は、降水量の異なる3つの植生帯(森林ステップ、ステップ、砂漠ステップ)で実施した。3つの植生帯それぞれにおいて、食害強度をSlight、Moderate、Badの3段階に区分し、各食害強度において1 m×1 m のプロットを9個ずつ設置した。各プロットにおいて植物根からDNAを抽出し、AM菌特異的プライマーを用いてSSU rDNAをPCR増幅した後、次世代シーケンサーIon PGMによって塩基配列を決定した。得られた配列を97%の相同性閾値でクラスタリングして操作的分類単位(OTU)を作成した。

プロット間の群集構造(OTU組成)の非類似度をBray-Curtis指数で算出し、PERMANOVAによる解析を行ったところ、全ての植生帯において食害強度間で群集構造が有意に異なっており、降水量に関わらず家畜食害はAM菌の群集構造を変化させることが示唆された。全ての植生帯において、土壌pH、植物根バイオマス、Stipa属の地上部バイオマスは群集構造と相関したが、他の環境因子と群集構造との相関の有無は植生帯によって異なっていた。食害による群集構造の変化は、土壌化学性の変化と植生劣化の複雑な相互作用によってもたらされることが予想される。


日本生態学会