| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-079  (Poster presentation)

高木層と低木層における鳥類種子散布者の比較

*加藤大貴(東京農工大学), 藤津亜希子(東京農工大学), 直江将司(森林総合研究所), 正木隆(森林総合研究所), 小池伸介(東京農工大学)

液果を結実させる樹木は主に動物による種子の散布(周食型種子散布)を行っている。森林性鳥類の多くは果実を主要な食物資源としていることからも、これらの樹木の種子散布に大きく貢献していると考えられる。種子散布者の貢献度の評価方法の1つにはSeed Dispersal Effectiveness(SDE)がある。SDEの要素は種子散布の量と質の両者で評価される。種子散布の量の基準には「結実木への訪問頻度」と「1回の訪問あたりの持ち去り果実量」がある。温帯林では階層構造が発達していることから、樹冠を構成する高木によって低木は種子散布者に発見されにくく、同じ種子散布者であっても量的なSDEが低い可能性がある。そのため、低木が種子散布を成功させるためには、高木とは異なった鳥類の果実食に影響する要因が存在する可能性があることから、これらを明らかにすることを目的とした。本調査は茨城県の小川試験地において行った。同時期に結実する高木、低木をそれぞれ数種ずつ選定した上で、双方の①果実結実量、②鳥類の訪問と果実食、および③対象樹種の特性(生育環境・結実量)と周囲の他樹種の結実量、をそれぞれ調査した。さらに階層ベイズ法により、低木の果実食鳥類による持ち去り果実量を増加させる要因の検討を行った。その結果、低木への果実食鳥類の訪問頻度は高木より少なかったものの、低木に飛来する鳥種は、植物の生育適地への指向的散布を行う、質的なSDEが高い鳥種が多いことが示唆された。また、低木での果実食鳥類による持ち去り果実量を増加させる要因には、自身の結実量のほか、同時期の周囲の高木の結実量が選択される樹種もあった。以上から、低木の液果における鳥類の量的な種子散布の貢献度は高くはないが、低木は自身の結実量が多く、周囲の高木の結実量も多い状況では、質的なSDEの高い種子散布者に多くの果実を持ち去られていることが明らかになった。


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