| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-100  (Poster presentation)

タネガシママイマイの種内変異の研究

*中山弘章(鹿児島大学)

陸産貝類は、他の動物群と比較して移動能力が劣るため、個体群間の遺伝子交流が極めて少ない動物群であり、局所的な特殊化が起こりやすい。本研究では、鹿児島県の島嶼に生息するタネガシママイマイの殻標本の形態解析を行い、本種における種内変異を殻形質に基づいて明らかにすることを目的とした。また、以前独自の方法で行われた本種の殻形質を用いた形態解析 (Tomiyama, 1984) の結果と、近年の手法を用いた本研究とを比較することも目的とした。ユークリッド距離を用いてクラスター分析を行った結果、トカラ列島中部・種子・屋久・宇治・草垣,トカラ列島北部・三島の2つのグループに分割出来た。マハラノビス距離を用いた場合は、トカラ列島・宇治・草垣,屋久・種子,三島の3つに分かれた。マハラノビス距離を用いた場合、地理的に近い個体群が同じグループに集まる傾向が強かったが、Tomiyama (1984)とは異なる結果となっていた。地理的に離れた個体群間で形態が類似するのは、陸続きだった時代に分散した個体群が、海に隔てられた後、環境条件などに応じて独自の形態変化を遂げ、その結果形態が類似したからだと考えられる。


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