| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-C-120  (Poster presentation)

成虫期干渉型競争と幼虫期消費型資源競争によって駆動される2種競争系

*川瀬貴礼, 京極大助, 近藤倫生(龍谷大・理工)

これまでヨツモンマメゾウムシ (Callosobruchus maculatus)とアズキゾウムシ (C. chinensis)の競争実験系等の室内実験により競争排除が繰り返し観測されてきた。しかし、種間相互作用である繁殖干渉の存在が示唆されてきたにもかかわらず、繁殖干渉の個体群動態に対する重要性は見落とされ、競争実験の結果は、資源競争によってのみ説明されることが多かった(岸・西田 2012)。幼虫期における資源消費型競争と成虫期における繁殖干渉が複合的に2種の共存に及ぼす影響を調べるため、これら2つの競争が個体群動態に及ぼす影響を考慮した2種の競争系数理モデルを構築・解析した。数理モデルでは、成虫期における繁殖干渉・幼虫期における資源競争を適切に表現するために、2種の生物種はそれぞれ成虫期と幼虫期の二つの成長段階に分けて動態を考えた。成虫期の繁殖干渉は、アズキゾウムシからヨツモンマメゾウムシに対して、幼虫期の資源競争はそれぞれの種内と種間の両方で生じると仮定した。数理モデルは、内田(1971)による室内飼育実験の結果に基づいて変数を決定した。成虫期における繁殖干渉の強度と幼虫期におけるアズキゾウムシからヨツモンマメゾウムシへの資源競争の強度が平衡状態における二種の個体群密度に及ぼす影響に注目した。数値計算により、平衡状態を求めた上で、局所安定性解析によりそれらの平衡点の安定性を評価した。解析の結果、幼虫期に起こる資源競争と、成虫期に行われる繁殖干渉がうまくバランスしている場合には、2種の安定的な共存が可能になることが分かった。


日本生態学会