| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-134  (Poster presentation)

水稲自然栽培の履歴の違いが水田の節足動物群集に与える影響

*中田敏朗(金沢大学大学院), 商奕晨(金沢大学大学院), 高橋和大(金沢大学), 松浦崇裕(金沢大学), 高嶋忠夫(JAはくい営農部農業振興課), 粟木政明(JAはくい営農部農業振興課), 中島一明(羽咋市総務部羽咋市まち・ひと・しごと創生本部事務局), 廣島和哉(羽咋市産業建設部農林水産課), 西川潮(金沢大学)

水稲の自然栽培や有機栽培といった無農薬・無化学肥料(無無)栽培は水田の生物多様性を向上させるうえで効果的な取り組みである。しかし、これまで無無栽培歴の違いが水田の生物多様性に及ぼす影響は未解明である。本研究は、石川県羽咋市で取り組まれている水稲の自然栽培(無農薬・無肥料栽培)の取り組みの有無とその履歴(栽培年)の違いが、水田の節足動物群集に与える影響を明らかにすることを目的として野外調査を行った。2016年5月下旬から10月中旬にかけて、栽培年の異なる自然栽培田(1、2、3、4、6年目)と慣行栽培田、計20筆を対象として、クモ類と昆虫類(カメムシ類、バッタ類、イトトンボ類)の調査を行った。クモ類は、稲株の見取り法、ピットホール法、すくい取り法により分類群ごとの生息数を求めた。昆虫類は、すくい取り法により分類群ごとの生息数を求めた。結果、慣行栽培田と比べ自然栽培田で、地表徘徊性クモ類(主にコモリグモ類)の生息数は約2倍、造網性クモ類(主にアシナガグモ類)の生息数は約3倍、イトトンボ類の生息数は約6倍多かった。一方で、農業害虫であるバッタ類の生息数は、慣行栽培田と比べ自然栽培田で約1.6倍多い傾向にあった。カメムシ類の生息数はどの圃場でも非常に少なく、農法・栽培歴間で明瞭な差は認められなかった。分類群によっては、自然栽培の取り組み年の増加とともに生息数が増加する傾向が見られたが、概して、自然栽培は取り組み初期から水田の節足動物群集の多様性向上に大きな効果をもたらすことが示唆された。


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