| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-143  (Poster presentation)

亜熱帯照葉樹林におけるCCDカメラを用いた樹洞の内部環境と利用生物の把握

*井上奈津美(東大院・農), 井上遠(東大院・農), 外山雅大(根室市歴史と自然の資料館), 吉田丈人(東大・総合文化), 鷲谷いづみ(中大・理工)

樹洞は樹木の幹や枝に形成される空洞を指し、大径木が多く生育する成熟した森林に多く見られる。また、絶滅危惧種を含む様々な動物が営巣や越冬などに利用することから、樹洞は森林の生物多様性指標のひとつとされる。例えば、本研究対象地の奄美大島では奄美群島固有種や絶滅危惧種であるルリカケスやリュウキュウコノハズクなどの樹洞営巣性の鳥類が生息している。奄美大島は、国内最大規模の亜熱帯照葉樹林を有しており、そこに存在する樹洞の内部環境や利用生物を把握することは、森林の生物多様性保全に資する情報の収集につながると考えられる。
本研究は、航空写真から75年間以上大規模な開発跡が認められなかった奄美大島の森林域で行った。樹洞の内部環境(深さや水の有無)と樹洞で営巣している生物とその痕跡を把握するために、樹洞内撮影用CCDカメラを用いて樹洞内の撮影を行った。撮影時期は、営巣中の鳥類への刺激を最小限にするために、鳥類の繁殖期の終盤(6月)に行った。
39本の樹木における47の樹洞の内部の映像を撮影した。このうち、比較的深い樹洞は頻度が32%(15/47)と低い傾向があった。キツツキ類によって形成された2つの樹洞には、水が溜まっていた。比較的深い樹洞のうち33%(5/15)の樹洞で絶滅危惧IB類のケナガネズミ(営巣跡)、絶滅危惧II類のリュウキュウコノハズク(幼鳥)、ルリカケス(営巣跡)の樹洞の利用が確認された。比較的浅い樹洞では樹洞営巣性の哺乳類や鳥類の利用は確認されなかった。本研究により、樹洞の内部環境と利用生物の把握がCCDカメラを用いることで可能になることが確認された。


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