| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-233  (Poster presentation)

近縁スジシマドジョウの同所的繫殖と繁殖干渉のリスク

*森井清仁(滋賀県立大学), 中野光議(金沢大学), 高倉耕一(滋賀県立大学)

滋賀県にはオオガタスジシマドジョウCobitis magnostriata(以下、オオガタ)とビワコガタスジシマドジョウC. minamorii oumiensis(コガタ)の2種が分布している。両種は、琵琶湖岸全域に生息していたが、近年急減し、特にコガタの分布は北湖西岸北部にほぼ限定されている。これまで、オオガタとコガタは繁殖時期・場所を別にすると報告されてきたが、現在の主要な繁殖地のビオトープでは、両種が同所的に繁殖していることが明らかになっている。その繁殖地における2015年の研究では、両種間に繁殖干渉が存在している可能性が示された。しかし、1年間のデータであることと資源競争や捕食者の影響が考慮されていないことから、両種の繁殖干渉を説明するうえで不十分であった。そこで本研究では、繁殖干渉およびその代替仮説である捕食と資源競争について調査を行った。
 滋賀県高島市の休耕田を利用したビオトープ池で、調査地に通水している2015年5月9日から7月4日および2016年5月10日から7月29日に、両種の成魚・稚魚、および稚魚・卵にとっての捕食者のすくい取り調査を行った。また、調査日前日の17~18時に取水口と排水口付近に小型定置網を設置し、翌日の8~9時に回収した。さらに、2015年7月4日、2016年7月2日、2016年7月29日の落水時に取水口と排水口に小型定置網を設置し流下個体を採捕した。プランクトン調査は2016年5月から7月の間、月に1度の頻度で行った。
その結果、オオガタの成魚は、2016年に2015年の2倍以上の個体数が採捕された。一方、2015年と2016年のコガタの成魚の個体数はほとんど変化しなかった。しかし、2016年のオオガタの稚魚は、成魚の個体数に比例して多くなったにも関わらず、コガタの稚魚は2016年の方が少なくなった。つまり他種頻度の増加によって適応度が減少する種間相互作用である繁殖干渉の存在が強く示唆された。他方、稚魚の餌資源や捕食者の消長では両種の再生産の違いを説明できなかった。


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