| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-I-274 (Poster presentation)
落葉分解は、陸域生態系の栄養塩・エネルギー循環にとって必要不可欠なプロセスである。落葉分解に影響を与える要因として、主に葉の形質、環境要因、分解者群集の3つがあげられる。ある種の葉を単一で分解させた時の分解速度に比べ、多種の落葉と混交することで分解速度が促進あるいは抑制される非相加現象を混交効果という。これまでの混交効果を調べた研究では対象が少数種である場合が多く、落葉の形質や環境が混交効果に及ぼす影響は明確でない。さらに、遷移段階や物理環境変化が混交効果に及ぼす影響を解明することで、落葉の形質と環境の相互作用が分解に果たす役割が明確になる。そこで本研究では、落葉形質が混交効果に与える影響、森林遷移段階の違いが混交効果に及ぼす影響を明らかにする。茨城県にある林齢およそ100年の老齢林とその周辺の皆伐後10年弱の若齢二次林において、落葉広葉樹54種から形質の違いを幅広くカバーするように16種を選定した。その中から落葉分解を強く規定する形質である窒素とリグニンに着目し、リグニン濃度が最も高いブナ、窒素濃度が最も高いヤマハンノキを基本種とし、残りの14種を混ぜ込み種とした混交分解実験を行った。ブナを基本種とした場合には、老齢林、若齢二次林とも有意な負の混交効果(分解抑制効果)が見られた。一方、ヤマハンノキを基本種とした場合、若齢二次林でのみ正の混交効果(分解促進効果)が見られた。また老齢林においてブナと各種を混ぜ込んだ場合、ブナ、混ぜ込み種ともに単一時の分解速度に比べ分解速度は有意に遅くなっていた。つまり、混交効果の方向性は、ブナ(遷移後期種)とヤマハンノキ(先駆種)という種の違いによって異なり、混交効果の大きさは森林の遷移段階によって異なるということが明らかとなった。さらに、これらの混交効果の大きさは、混交される2種の形質の差の大きさによって説明できることがわかった。