| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-I-276 (Poster presentation)
景観複合体としての里山における移行帯の機能評価を行うため、薪炭林‐林縁‐畦畔の移行部分において土壌動物群集の分布特性、機能群組成の変化と環境要因の違いを調べ、対応付けを行った。
新潟県佐渡市岩首集落において、標高や景観の違による土壌動物群集の違いを調べるため、標高160m~470mにかけての6地点の棚田において水田畦畔から林内に跨るベルトトランセクトを設置し、畔、林縁、林内における土壌動物個体数、機能群組成とそれらを支配すると考えられる環境要因について計測を行った。
各調査地点には景観を分断する構造物は存在せず、その植生は多くの地点において林縁に袖群落やマント群落を確認することができた。これにより、景観の物理的、植生的連続性は高いことが確認された。
土壌動物の個体数は畔のように環境幅が大きく、人為的攪乱頻度の高い環境において土壌水分量や土壌硬度などの環境要因との間に有意な相関関係を示した。また、土壌動物の機能群組成は景観の違いや環境の影響を受けず、各地点における機能群組成は極めて類似することが示された。土壌動物は畔のように環境の分散が大きい地点では、環境要因に応じて個体数を変動させる一方、景観の連続性が高い環境においてその機能群組成は極めて安定的であることが示唆された。
本研究では景観の物理的連続性の高い里山における土壌動物の分布特性と機能群組成の一例を示した。今後、森林利用、農業形態の全く異なる地域で調査を進め、土壌動物の機能群組成の違いの比較を行うことで、これらを環境指標として用いることが可能になると考えられる。