| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-I-277  (Poster presentation)

里山林における長期管理の有無が土壌環境と炭素循環に及ぼす影響

*山田靖子(早稲田大・院・先進理工), 山田理香(早稲田大・院・先進理工), 友常満利(神戸大・院・農), 小泉博(早稲田大・教育)

 森林は地球全体の炭素固定の約25 %程度を担い、多くの生物の生命活動を支えている。近年、人間活動が森林の生態系機能に与える影響を解明することが重要視されており、その一環として伝統的な森林管理形態である落葉や下層植生の持ち出しに着目した研究が行われているが、これらは数年間の短期管理に注目した研究が中心である。従来里山のような森林には長期的な管理が施されてきたが、このような森林に焦点を当てた研究は、ほとんど行われていない。そこで本研究では、40年間にわたり継続的に管理した森林生態系を対象に、下層植生や落葉の持ち出しが生態系の炭素循環に与える影響を調べることを目的とした。  
 調査はコナラが優占する暖温帯落葉広葉樹林で行った。林床にはアズマネザサが繁茂していた。調査地内に年1回冬季に落葉落枝と下層植生の持ち出しを40年間継続している管理(M)区と全く管理していない非管理(C)区を設置した。炭素動態の評価には生態学的手法を用いた。純一次生産(NPP)の構成要素である樹木成長量(WL)とタケ成長量(BL)、下層植生の成長量(UL)枯死脱落量(LF)、土壌呼吸量(SR)を測定した。また、SRから従属栄養生物呼吸量(HR)を算出し、NPPからHRと持ち出し量(UR + LR)を差し引くことで生態系純生産量(NEP)を推定した。
 管理の有無よるNPPの大きな差は両区で認められなかった(11.04 ~ 12.20 t C ha-1)が、WLはM区では6.74 t C ha-1とC区(4.31 t C ha-1)よりも高い値を示した。一方、HRはM区で6.47 t C ha-1 とC区(8.79 t C ha-1)よりも低い値を示した。また、持ち出し量はM区で2.37 t C ha-1の値を示した。以上からNEPを算出すると、C区で2.25 t C ha-1、M区で3.36 t C ha-1を示し、管理区においてわずかに高い値を示した。


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