| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-I-278  (Poster presentation)

再開発ダム完成前後のダム下流生態系における物質循環の比較

*菊地亮太(弘前大・院・農生), 神崎東子(京都大・院・農), 東信行(弘前大・農生)

青森県を流れる岩木川では上流域において1960年から約半世紀の間、目屋ダムが運用されてきたが、2016年にダムが切り替わり新たに津軽ダムが運用されている。このダムには新たに選択取水設備や水質保全ダムなどの環境対策が施され、さらにダム湖水の放水口も変更されている。岩木川には多種多様な生物が生息しているが、目屋ダムの影響でダム下流においてダム湖水放流サイトからの距離に応じ、食物網・物質循環・水生昆虫相などに変化が生じていた。しかし環境対策を施したダムに切り替わり、放水口の位置も変更されたことで異なる変化が予測される。このような再開発ダムに切り替えられたというインパクトに対する河川の応答に関する報告はきわめて少ない。

そこで本研究では、ダム下流域の食物網・物質循環に注目し、再開発ダムに対する河川の応答を調べるため、津軽ダムの上・下流に生息する魚類・水生昆虫・粒状有機物・付着藻類を対象に分析を行った。分析には炭素・窒素安定同位体比を用いた。目屋ダムの影響(~2015)と津軽ダムの影響(2016)を比較することで、性質の異なるダムが同一河川に与える影響を調べた。

結果として、炭素安定同位体比において津軽ダム直下~数kmの範囲で以前とは異なるダムの影響が見られた。これはダム湖水放水口の変更によりダムの影響範囲が変化したことが主な要因であると考えられた。窒素安定同位体比においてはほぼ以前と同傾向であり、周辺からの窒素・栄養塩負荷がダムの影響よりも大きいためと考えられた。しかしダム運用初年度であり環境が不安定なため継続的な調査の必要性が示唆された。


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