| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-I-285  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林における根圏滲出物の季節変化

*本多朝陽(早稲田大・院・先進理工), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進理工), 小泉博(早稲田大・教育)

植物は根圏滲出物として土壌中へ糖や有機酸などで炭素を滲出させている。森林生態系の炭素収支を正確に評価するために滲出物の定量は重要であるが、従来の研究において滲出物は無視されており、特に野外での研究例は少ない。そこで本研究では、野外における滲出物を定量し、その季節変化を解明することを目的とした。
調査は暖温帯のコナラ(落葉広葉樹)林を中心に、その比較として同一環境下のアカマツ(常緑針葉樹)林で行った。樹木の細根を土壌中から露出させ、バーミキュライトと栄養液で満たした容器 (100 ml) に入れ、土壌中へ埋め戻した。それを一定期間(24時間)後に回収し、容器内の炭素量の変化をNCアナライザーで測定することで、炭素の滲出速度を算出した。さらに細根バイオマスを測定することで、滲出された有機物量を生態系スケールに換算した。また根圏微生物にとって滲出物は栄養源であるため、滲出物と微生物の関係を明らかにするために、回収後のバーミキュライトから従属栄養生物呼吸(HR)を測定した。
2016年8月から2017年1月における測定では、滲出速度はアカマツ(1.05 mgC g-1 fine root day-1)よりもコナラ(1.43 mgC g-1 fine root day-1)の方が1.5倍程度高い値を示した。また、コナラにおける滲出量(98 gC m-2 year-1)が生態系純一次生産量(NPP)に占める割合は8.4%であった。したがって滲出物はNPPに大きく寄与しており、炭素収支を正確に評価する上で考慮すべきと示唆された。滲出物はコナラでは夏季に多く冬季に少ない季節変化を示したが、アカマツでは明瞭な季節変化を示さなかった。また、滲出物の増加に伴ってHRも増加することが明らかになった。


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